深夜を過ぎた頃に、男は車に乗り込んだ。 男は、20万弱の人間が生きる小さな地方都市のまばらな明かりが瞬く夜景を右手に眺めながら、高速道路を 小一時間ほどステアリングを握り、暗闇の中に薄明るいオレンジ色の看板が妖しげに光る建物の、2台分ほどの小さな駐車スペースに車を滑り込ませる。 胸ポケットから煙草を取り出し、安っぽい居酒屋の名前の入ったライターで火を付け、二・三回紫色の煙を吐き出すと、車から降りてコートの襟を立てながら建物のドアに向かって歩き出した。 4月とはいえ、まだ暗い朝の時間の気温は肌寒さを感じながら、男は無造作に店のドアを開けて中に入る。 女将とおぼしき割烹着を着た年配の女性が、チラッと男の顔を一瞥する。 店の中には2人の年配者がいて、テレビのゴルフ中継を見ながら雑談しているようだ。 男は、先客や雑然とした店内を気にする様子もなく、正面のカウンターの前に立った。 ポケットから紙幣を2枚出して年配の女将に差し出す。 「いつものヤツ。。。」 女将は無言のまま、サラサラと何かを走り書きした小さな紙切れとコイン、そして缶コーヒーを差し出した。 男は無言でそれを受け取り、店のドアを閉めて、足早に車に乗り込んだ。 ・・・・というワケで、あゆみチャンからのラブホdeデートのお誘いと、モモちゃんからの花見deデートのお誘いにシカトを決め込んで、やってきました今シーズンの初渓流!! 来る途中に、男が無言で年配の女将から受け取ったモノは、コレだったりします(笑) ところで・・・・渓流に向かう道すがらAstrumが何かの動物に出会った時は、あまり結果がかんばしくありません。そして、今回Astrumが遭遇したのは・・・・。 動物から物体に変化した直後のようです。コレ・・・何ですかねぇ。 マルちゃんの緑の○○○? そえとも赤い△△△? もしくは美味いラーメン出汁の元かニャン? はたまたケータイ会社のおとーさんかイヌ? さて、、、コレはいったい、本日のAstrumのどんな結果を暗示しているのでしょうか・・・。 もう端午の節句も近いのですネ。 とにかく、6時の時報を知らせる村内放送の「エーデルワイス」のオルゴール音を背にして、川に入りました。 キャーッ!! (ノ゚听)ノつめたッ!! 水・・・やたら冷たく感じるのは気のせい? その感覚の通り、いつもはピチャピチャとアタックしてくるチビヤマメさえも反応がありません。 でも思い返してみれば、去年もこんな感じだったかな。。。 いつもある筈のアタックポイントでも反応が無く、厳しい釣りになるかも・・・と思っていた矢先に・・・ デタ〜ぁ〜ぁ!! ヽ(゚▽゚*)乂(*゚▽゚)ノ バンザーイ♪ 18cmくらいの、若々しい・・・というより、ひ弱そうなヤマメ君です。 放流モノなのかな? なにはともあれ、最初の1匹が思ったより早くネットインして、ニッコリです。 次に釣れたのも、先ほどよりチョッと小ぶりで、同じようなひ弱そうなヤマメ。 その後もポツポツ反応があり、前半戦終了時点で5匹のヤマメさんと対面致しました。 みんな同じ様なサイズですわヾ(ёё)ノ 後半は、橋の上に立って、脱渓地点までのプランを練ります。 まずは、あの堰堤の上のポイントで2匹。 その先の岩場の所で1匹掛かるけど、それはバラシて、その先の大岩の所で小ぶりのヤマメを引っこ抜く。 次のポイントの以前泳いだ場所は、縁起が悪いからテキトーに流して、カーブの先の巨岩のある渕で本日最大のヤマメを1匹釣って、その横の緩やかな流れでイワナをネットイン!! その先の竹笹が覆いかぶさった渕で、本日〆の中型ヤマメを釣り上げて、今日はおしまい・・・というプランです。 慎重に堰堤の上に立ったAstrum。 ココというポイントに向けてフライを放り込むと・・・すかさずボコッ!! 間髪を入れずビシュッとロッドをあおるAstrum。 が、、しかし。。。(/TДT)/あうぅ・・・・ 次のポイントでも、ジュポッ!! ビシュッ!! (。>0<。)ビェェン のっけからプランに無いバラシの連続(ノ_・、)シクシク その先の岩場では、バラスはずの予定が・・・釣れちゃったよ〜ぉ( ̄― ̄?)ありゃ?? そうでした。。。忘れてました。 Astrumという人物は「ノルマ」とか「計画」とか「予定」とか、仕事の場面で遭遇するタスクを一度としてマトモにクリアーしたことが無い、デキの悪い社員だったのでした。 そんなヤツが、サカナ釣る計画なんか立てても、絵に描いたドラ焼きみたいなモンです。 できるワケがない。。。 それでも、最終コーナーを曲がった巨岩の周りで、本日最大の20cmを含めて3匹のヤマメを釣り上げ、有終の美を飾ったのでした。 朝の時点では、厳しい釣りを覚悟した今シーズンの竿始めでしたが、終わってみれば数えきれないほどたくさんの9匹のヤマメに出会えました。 これは、もしかしたら物体化したのぐり様(タヌキの韓国語=のぐり)のおかげかもしれません。 帰途、事故現場において、タヌキさんのご冥福を謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りしながら、片方の手であゆみチャンとモモちゃんの電話番号をケータイアドレス帳で検索するAstrumでありました。 男は、ハンドルを握りながら胸ポケットからタバコを取り出し、例の安っぽい居酒屋のロゴの入ったプラスチック製ライターで火をつけた。 吐き出した煙の向こう側に浮かび上がったのは、今朝立ち寄った店の割烹着を着た年配の女将の姿。しかし、どういうワケかその女将の顔はタヌキの顔をして、ニッコリ微笑んでいた。
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