今シーズン最後の自然渓流


<イントロ・・・・千夜釣行 風>
9月23日午前4時。気温15度。
1人のフライマンが、朝霧の立ち込める高原の川を目指した。
今年最後の渓流の宝石たちに出会うために・・・。

<釣果その@・・・・西村寿行 風>
男は、くわえタバコで、やや増水した川を見つめていた。川には 何かが息を潜める濃密な気配が充満していた。
さほど敏捷とは思われない体躯。疲労感が漂うやつれた頬。しかし、その眼光は「S&W M36」の銃身に似た鈍い光を放ちながら流れを追う。
何度か訪れたことがあるらしく、慣れた様子で身を翻し、川を溯り始めた。
程なくして、2つの石が流れを分断し、それぞれの流れ出しが再び交わるポイントに出る。男は身をかがめながら、明るめのインジケーターを付けたパラシュートを撃ち込んだ。

水流の渦巻く音とは明らかに異質の、重い生命感の宿る飛沫音とともにパラシュートが沈む。
その瞬間、弧を描くTR社製12850円・#3:7フィートのグラファイトロッド。
その野生は、流芯を下り、沈み石の底を目指す。抵抗。反発。突進。そして反転。この石が、数々の修羅場をくぐり抜けて生き延びてきた、ヤツの唯一の安息の場所だ。
12850円のロッドのしなりとともに、S社製7380円(税別)のリールが悲鳴を上げる。どちらも、決算期末バーゲンの際に、衝動買いした迷機である。

男は、忙しくラインを手繰り、背中のネットを差し出す。
流芯を横切り、水面を割って収まった27cmのヤマメ。
体高の高い錆の入った魚体。鋭く湾曲した上顎。形の整ったシャープな尾びれ。

男の口元から、わずかながら笑みが浮かぶ。
しばらく立ち尽くして、ベストの胸ポケットからタバコを取り出し、ジッポを灯す。紫煙が風に舞う。
男は再び、流れを遡り始めた。

<釣果そのA・・・・宇能鴻一郎 風>
わたし、困ってるんです。
秋になると今までユスリカ以外見向きもしなかったオトコ達が、しつこくつきまとってきて・・・・。私、自分でいうのは変なんですけど、この川に生きてる魚のなかでは、かなりイケてる方だと思うんです。
体長は20cm。
体としては平均サイズだけど、スタイルには、ちょっぴり自信があるんです。
今日も何匹かのオトコが誘ってきたんですけど、おなか空いてたんで無視しちゃって、流芯の底で、美味しそうなものが流れてこないかと水面をみてました。
そうしてたら、クリーム色の胴体に頭が茶色い美味しそうなものが、流れを真っ直ぐ下って来たんです。私、思わず飛びついちゃいました。でも、それが間違いだったんです・・・・。

「いや〜ン。何コレ?」
パクッ!とお口に入れた途端、私のかわいいお口にハリが刺さっちゃったーぁ。。。
わたし、何とかハリを外して逃げようとしたんですけど、もがけばもがくほどハリが深く刺さっちゃって、抜け出せそうにないんです。あッという間に、黒い網の中につかまっちゃいました。



私を釣り上げたお兄さん、最初のうちはチョット怖かったんですど、けっこう優しい人みたい。何をされるのかわからずに怖くてジッとしてたら、私の体を舐めまわすように隅々まで眺めてるんです。そのうえ写真まで撮られちゃったんです。
私、すっごく恥かしくて、体じゅうが赤面しちゃいました。
するとお兄さん、今度は私の体を濡れた手で触ってくるんです。わたし、背中触られると感じちゃうんです。そのときも、思わずビクンって感じちゃいました。お兄さん、すっごいテクニシャン。「あぁ〜ん」って声まで出そうになったんですけど、どうにかガマンしました。ぐったりした私は、お兄さんの大きな手で抱っこされて、ハリをお口から外してもらって、優しく川に帰してもらいました。
ちょっと痛くて怖かったけど、優しいお兄さんで良かった〜ぁ。


終わった。終わった。
今年最後の渓流は、最後を飾るに相応しい過去最大サイズのヤマメを筆頭に、5匹のヤマメと出会えました。半日だけの釣行ながら、大満足。


<エンディング・・・・再び千夜釣行 風>
今シーズン出会った渓魚。
ヤマメ27匹。 イワナ10匹。 ブルック5匹。 渓魚以外の口の丸いヌメリのあるヤツ4匹(・_・;)

今年行った渓流。
大北川。 四時川。 湯川。 東荒川。

釣行回数 13回。

自然と、川と、釣りを通じて出会った皆さんに、心から感謝の気持ちをこめて。。。。

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